南極寿星 カノープス 2月9日

りゅうこつ座α星 カノープス 鉄塔左横にポツンと 20:35

 全天で天狼星シリウスに次ぐ第二の明るさの恒星ですが、高度で2°強と南に低いので、家が建て込んでいる市街部ではなかなかお目にかかるチャンスはありません。いまごろの南中時刻は21時頃で、見やすい時期です。見えそうな場所を探しておいて、見るつもりで見に行かないとお目にかかれない星です。高度が低いので大気による減光も大きく、昨日の大気の透明度は絶好とは言えませんでしたが、まあなんとか見えました。前にこの星にお目にかかったのは多分30年ほど前、ずいぶん前の事です。

天狼星シリウスから南極寿星カノープス 20:29

 手前の暗闇は田んぼです。昨夕は田んぼで星を見ている怪しい奴でした。時折、水鳥の羽音がしていましたので、怪しんで飛んでいったのカモ知れません。

星の名

 冬の南天低くの星座はあまりなじみのないものが多いです。とも、りゅうこつと言う名は船の構造から来ています。この辺は昔ギリシャ神話に出てくるアルゴー船を模したアルゴー座でした。船に絡んでと言うわけではありませんが、私の辺りからだと、この方角はコンテナ船の出入りする日本屈指の貿易港名古屋港があって、ただでさえ名古屋の光で明るいのに輪を掛けて明るいです。しかもその先には空の港 中部空港があって飛行機の発着が頻繁です。この写真で、とも座にある明るい星のように見えるものは中部空港に発着する飛行機です。

 カノープスの和名は、星の文学者野尻抱影氏の著作(日本の星、中公文庫)によれば、鹿島灘東京湾から遠州灘一帯にかけて、布良(めら)星。房総ではこれ以外に和尚(おしょう)星、入定(にゅうじょう)星。私の故郷の播州では、見える方角から、鳴門(なると)星、淡路(あわじ)星。またたこがとれる時期と関係して、あきら星(秋たこ星)(明石のたこは関西では有名です)。漁師さんたちが呼んだ名前が多いのは、星が南に低く、南が開けたところで海上に見える星であることと密接に関係していて素朴な呼び名だと思います。この星が見えると海が荒れるという言い伝えも、例えば西高東低の天気の時に風が吹き大気の透明度があがることと関係していると思われて、昔の漁師さんたちの生活実感に通じています。

 ちなみに中国名は、同じく上掲書によれば、老人星、南極寿星で、七福神の寿老人は宋の時代にこの星が老人の姿となって都に現れた時の姿であると言うことです。日本に伝わって陰陽道では老人星祭というのがあり、この星が見えたことがきっかけで改元が行われたりした事があるとのことです。

 もっと透明度が良いときに、もう一度チャレンジしてみようと思っています。