雨読 野尻抱影「星三百六十五夜」4月12日

 朝、日差しがあったのに、だんだん空が暗くなってきて、天気予報も雨なので、少し草刈りをして、作業はお休み。星の文学者 野尻抱影氏の「星三百六十五夜」(*1)の4月12日の項「長安の春」を読みました。

 この小文で野尻さんは、春の星座の一つ海蛇座にふれ、海蛇という名よりも、春にふさわしい中国名の柳宿に惹かれると記します。中国では柳の緑、桃の紅は春の代名詞です。風にそよぐ新緑の柳の枝は、たおやかな女性の姿にもたとえられます。野尻さんは、詩聖 白楽天が二人の美人、小蛮と樊素をそれぞれ柳と桃にたとえた楊柳枝詞をとりあげ、その故事の中に柳宿が出てくることから、この二人の美人を海蛇座のどの星に見立てようかと空想して、「私もどうも現代の人間ではないらしい。」と結んでおられます。

春の星座 海蛇座、漢名 柳宿について

2023年4月12日夜10時ごろの南の空

 この時期、夜10時ごろ、海蛇座は南の中天に東西に長く横たわります。春の星座といえば、一等星レグルス、スピカ、アルクトゥルスに目が行くので、あまり海蛇座を認識したことはなかったのですが、調べてみると中国の天文・占星術で重要とされる二十八宿の内、柳宿(海蛇頭部)、星宿(アルファルド近辺)、張宿(海蛇座中央部)の三宿を擁する大星座でした。

 天気予報によれば、寒冷前線通過後夕方には晴れるようなので、名古屋の光で明るい空ではありますが、一度その星の並びを追ってみようかなと思っています。

 ちなみにここ数日は日没後の夕空に水星が良く見えています。

2023年4月12日午後7時ごろの西空 @名古屋近郊

 晴れていれば、宵の明星 金星が明るく見えるので、それを目印にして探します。明るさは金星が―4等に対して水星は0等です。高さは金星が30°ぐらい、水星は10°ぐらいです(午後7時)。遅くなると空が暗くなって見やすくなりますが、高度は下がってしまいます。

*1  私の所蔵する野尻抱影「星三百六十五夜」は、恒星社厚生閣 昭和52年10月10日発行の愛蔵版。購入書店は姫路駅前御幸通り 新興書房(大きな書店でしたが、今はもうそのなつかしい場所にはありません)。